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東京高等裁判所 昭和29年(う)1015号 判決 1954年10月02日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

≪前略≫

論旨第二点

外国人登録法第十三条第一項の規定に違反して登録証明書を携帯しない罪の成立には、犯人においてこれを携帯していないことの認識あるを要するは洵に所論のとおりである。然しながらすでにして、外国人でありながらこれを携帯していないことの客観的事実の明認し得られるもののある以上、特段の事情の確認し得るものがないかぎり証明書を携帯していないことの認識があつて敢て携帯しないものとの推定を受くべきは事理の当然とするところであるから、被告人が外国人でありながら右証明書を携帯していなかつたことの明らかな本件においては、被告人は、当然これを携帯しないことの認識のあつたものというのほかはない。被告人が所論供述調書の中や、原審公廷でしているその認識がなかつたという趣旨の供述は、証拠によつて認められる本件事案全体の態様乃至は事の経過に照らし、到底措信するを得ない。その他記録を精査するも、被告人に不携帯の認識がなかつたことを確認するに由がない。外国人登録証明書不携帯の事実につき被告人に犯意がなかつたとして外国人登録法違反の罪の不成立を主張する所論は採用するに由なく、論旨は理由がない。

≪後略≫

(裁判長判事 大塚今比古 判事 三宅富士郎 河原徳治)

<以下省略>

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